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一本松家 3代目 花成

2019.08.27 21:15|俺屍
 一人っ子プレイでイツ花の視点で綴る形式。
 3代目 花成(かせい)の記録。1019年9月~1020年6月。





1019年 9月

 花成様のご息女は、父君によく似た深緑の髪と、翠玉の双眸をお持ちの方だった。肌の色が褐色で、母君の鳴門屋渦女様は透けるような肌の持ち主だったので、誰に似たのだろう?と花成様は首を傾げた。遺伝子とは不思議なものである。
「名は静花(しずか)。“花”の字は、私も母上から受け継いだものだ。どうか健やかに…」
 花成様の願いの通り、静花様は健やかにお育ちになられた。素質に恵まれ、体の伸びも技も覚えもよかった。



1019年11月

 2ヶ月の訓練期間を経て、今月は静花様の初陣。
 花成様はそこで一つの大きな決断をする。
「大江山へ行く」
 初陣の娘を連れてのそれは強行軍に思われた。その気持ちが顔に出てしまったのか、花成様は苦笑いを返した。
「無理はしないよ。坂の上にいるという大きな鬼の気配を確かめておきたい。──来年、この子が登る時の標になるように、」
 そう言って花成様は静花様の頭をそっと撫でた。その時、この方はもう覚悟を決めているのだ、と、私は理解した。
 大江山討伐は二月続けられ、中腹に住む痩せ仁王・太り仁王という二鬼を倒し、朱点閣の橋の前まで攻略は進んだ。



1020年 3月

 静花様の素質は高く、討伐に出るたびに力をつけて帰って来た。特に、1月に相翼院で秋津ノ薙刀を手に入れてからは目覚しく、母君譲りの高い水の技は存分に活かされた。
 今月に行われた選抜の朱点童子公式討伐隊試合においても、2人で優勝を果たし、一本松家は向かう所敵なしに見えた。
「優勝、おめでとうございます! 夏に続いて、春までも! イツ花の鼻も高うございます!」
「神々のご加護のおかげだね、これも」
 満足げな花成様に比べ、静花様は何かを考え込まれているようだった。元より、名前の通りにお静かな方ではある。が、今日のは少し様子が違った。
「ねぇ、お父様って、モテるの?」
 突然、静花様は言った。
 は、と花成様と私は息を飲む──いやいや、とすぐに花成様は否定したが。
「今日の大会、歓声がすごかった…。しかも女性の、」
 ──そうなのだ。昨年の夏の大会、花成様は一人で参加し、優勝を飾った。その雄姿が語り草となり、都ではちょっとした人気者なのである。夏と違って、春の大会は選抜なので普段なら見物人も少ないらしいのだが、今年は大盛況だと露店のおじさんが教えてくれた。
「こういう、団扇にね、お父様のお名前が、デカデカと、」
「都はまだ復興途中で、娯楽も少ないから、」
 顔を赤くさせて花成様は言い繕うが、無理がある。父君がおモテになるので、一人娘としては複雑な心境なのかしら、と思いきや、静花様はさらなる衝撃の一言を放った。
「私、兄弟が増えるのは、やぶさかではないのですけど、」
「静花っ!」
 花成様の一声に、静花様は首を傾げる。
 こほん、と一つ咳払いをして。
「私にはもう君という娘があるし、天界にいるとはいえ、渦女様と夫婦の契りを交わしている。誰かとこれ以上どうなる気などない。第一、子を成せぬのに、そんな無責任のことは、」
「…本当に?」
 重ねて問う静花様の言に、花成様は固まる。
「本当に、私たちは普通のヒトとの間に子が成せないの? 誰かが試したの?」
 ──おそらく、そう、試した者はいないだろう。
 ……だが、それは。
 花成様は何も答えない。
 私にも何も言えない。
「…なら、試してみても、」
 思い詰めたように呟く静花様の肩に、花成様はそっと手を置いた。
 静花、と娘の名を優しく呼んで、微笑む。
「──絶対にダメだ」
「だから、なんで?」
「イツ花! この子の貞操観はどうなってるんだ!?」
「えっ、私の責任なんですかっ!?」
「ねぇ、どうしてダメなの?」
「いいかい、静花。夫婦の契りというのは──、」
 この時、静花様、6ヶ月。
 交神の儀を迎えるまでの残りあと2ヶ月。
 討伐の合間にみっちりと“教育”されたのは言うまでもない。



1020年 5月

 すったもんだの末、静花様も何とか成人を迎え、交神の儀へ出かけて行った。
 お相手は火の神、大隅爆円様。隈取りが化粧かどうかを確かめてみたい、と真剣に言っていたので、不安は尽きない。
 そんな中、花成様の健康度が下がった。
「今にして思えば、お祖父様は幸せな方だったのかも知れない」
 千金人参を煎じたものを飲みながら、花成様は言う。
「孫にも会えたし、親子三代で出陣も果たした。我が一族にとって、それがどれだけ稀有なことか。自分の身に置き換えると、よく分かるよ…」
 薬は思ったよりも苦かったらしい。眉間の皺が深くなった。
 花成様は今月で1歳6ヶ月。お祖父様の初様が亡くなったのと、同じご年齢であった。
 交神の儀からお戻りになった静花様は、ひどくお疲れのご様子だった。
「子作りってしんどい。もう一度、アレを試そうとは思えない…」
 直接的な肉体の接触は必要ではない、とご説明は差し上げたのだが──交神の儀をどう過ごすかは当人たちに任されている。何をどう試したのかは詳しく聞かないことにする。
「安心して。十月十日もこの身に赤子を宿すわけにはいかないもの。ヒトとは交わらないわ」
「なぜ、私の娘はこう明け透けなのだろう…。どこで教育を間違ったのだろう…?」
 両手で顔を覆って、花成様は嘆く。
 大事なことよね?と静花様は私に同意を求めたが、苦笑を返すほかなかった。



1020年 6月

 漢方薬の力を借りて、花成様と静花様は白骨城へ出陣。
 昨年には果たせなかった最上階への登頂を達成し、親玉である大江ノ捨丸を打倒。
 ──それが限界だった。
「どんな誹りも妬みも、気にするな。静花、君は君の道を往け」
 当主ノ指輪を外し、娘の手に託す。
「屍の山を越え、血の海を渡れ。我らのあとに、道はできる」
 その指輪と共に、静花様は9か月で4代目“初”の名を継いだ。






03i
花成(かせい)
 日課:朝稽古
 9か月で3代目当主に就任。薙刀士。
 かまいたちとの相性が良く、一人で選考試合に優勝するほどに強かった。
 重めなマザコン。娘への二人称は祖父からの影響かと思われる。
 鳴門屋渦女は顔が好みだったので選んだが、交神の儀の際、彼女の「うずめ」の由来を聞き、子を為せる喜びを伝えられたので、一生大事にしようと心に決める。
 娘の静花が突飛な性格に育ったため、イツ花と共に振り回されたが、最後には一切を諦めた。
 イツ花に対しては、第二の母というか、伯母さまというか、そんな気持ちで接していた。


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