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一本松家 5代目 大成

2019.09.01 22:06|俺屍
 一人っ子プレイでイツ花の視点で綴る形式。
 5代目 大成(たいせい)の記録。1021年6月~1022年4月。






1021年 6月

 静花様がご逝去されてから、双子の育成は大成様の一人に任せられた。食事や着替えの準備などは私も手伝えるが、訓練まではそうも行かない。
「──紅成を特訓する!」
 朝食時に、大成様は宣言した。
 へ、と紅成様は間の抜けた声を出す。その口周りには米粒がいくつもついており、隣に座る紅花様が手を伸ばして取ってあげていた。
「紅花は自習できるよな?」
 こくん、と紅花様は静かに頷く。
 えらいぞぉ、と大成様はその頭をぐしぐしと撫でた。
 嬉しそうに目を細める紅花様。
「えぇ~、なんで俺だけェ…」
 嘆く紅成様の意向は無視され、その日から静花様直伝の大成様による“特訓”が始まった。

 夜中、子どもの泣き声がする──と思って、寝所を覗くと、大成様が起きていた。
 3枚の布団を並べて敷いたところへ寝そべって、ぽんぽんと紅成様の背中を叩いている。ふぁ、とあくびを一つ噛み殺したところで、大成様は私の姿に気が付いた。
「わりぃ。起こした?」
「いえ、」
 小声で問われ、そろそろと親子に近付く。
 双子は大成様を挟んで眠っていた。大成様の背中にはぴったり紅花様が張り付くようにしていて、こちらはぐっすり眠っている。反対に、紅成様は背中を丸め、苦しそうな表情を浮かべていた。その頬には涙の跡が見える。
「…厳しくし過ぎたかなぁ」
 紅成様の頬に手を触れ、大成様は言った。
「…先代も、そうされてましたよ」
「…俺は出来が悪かったから、」
 そうではなくて、と私ははだけた掛け布団を紅成様に戻す。
「先代も、大成様の夜泣きの時に、よくそうやって、」
 ふっ、と大成様は笑みを漏らした。
「…子守唄一つ歌えない母親でさぁ、」
 俺も歌えないけど、と付け足して。



1021年12月

 7月には白骨城の討伐、8月には第7回朱点童子公式討伐選考会にて優勝を果たし、双子共々、大成様の力も円熟していった。(先代曰く)素質こそ悪いものの、風の属性武器、“かまいたち”との相性がよかったのが幸いしたらしい。9月の親王鎮魂墓での討伐では、先代が創作した双光斬をも復活させた。
 紅花様は元より技水の素質が高かったので、“秋津ノ薙刀”をうまく使いこなし、初戦から戦力として機能した。11月の忘我流水道ではその上位武器である“中津ノ薙刀”を手に入れ、その強さに拍車をかけた。
 紅成様も、序盤こそ苦労したものの、紅花様同様の高い技水で得た円子や仙酔酒で父君や妹をうまく補佐した。
「父ちゃん、そろそろ、親玉に行こうよ~。俺ら、だいぶ強いって!」
「ダメ。絶対に無理しない」
 痺れを切らした紅成様の進言にも、大成様は断固として拒否した。
 ちぇっ、と紅成様はつまらなそうに舌を鳴らす。
「紅花も雑魚じゃ物足りないだろ?」
 半身である妹にそう尋ねるも、心の持ちようは兄妹でも違うらしい。
「父さんには父さんの考えがあるんだと思う。力を過信して、無闇やたらに敵に突っ込むのはよくない」
 つまんねぇな、と紅成様は不服そうに口を尖らせた。
 そんな彼らも来月には成人を迎える。
 一本松家のしきたり上、双子であっても子を成せるのは一人のみ。紅成様と、紅花様──どちらかに、次世代の子を託すことになる。
「交神は紅花がするといいよ」
 夕飯時に、紅成様は言った。
 漬物に伸ばしていた箸を一瞬止め、
「…メシ時にする話じゃない」
と、大成様は茄子のぬか漬けを齧る。
「なんで? 子どもの話は、うちの将来に関わることだろ? メシ時だろうが、風呂時だろうが、関係ない」
 なぁ、と隣に座る紅花様に同意を求めるも、彼女はちょうどご飯を口に入れたところだった。もぐもぐと口を動かすだけで、答えられなかった。
「素質は紅花の方がいいんだ。家のためを考えたら、紅花がするべきだ。俺のことを気にしてるんだったら、それは間違いだよ、親父」
 紅成様の父親への呼称は、幼き日の「父ちゃん」からいつの間にか「親父」に変わっていた。
 大成様は目を閉じたまま、何も答えずにボリボリと漬物を噛み続ける。先程から、漬物しか召し上がってない。
「…紅花が嫌なら、話は変わるけど、」
「わ、私は、」
 慌てて、口の中のご飯を飲み込んだため、紅花様は少しむせた。私の差し出したお茶を手にして、一口飲むと、落ち着く。
「私は、父さんがそう判断するなら……」
 大成様は目を開けた。
「わかった」
 大成様は、ようやく漬物以外のものに箸を伸ばした。


1022年 2月

 子の交神を終えて安心したのか、この月、親玉への挑戦が解禁された。討伐先である鳥居千万宮では土々呂震玄様を解放、九尾吊りお紺を打倒する戦果を得た。
 紅花様は奥義・鏡返しを新たに創作した。
「さすが、紅花! 俺の妹!」
 紅成様は手放しで妹の成長を喜んだ。

 討伐隊が戻ったその夜、紅花様は一人で当主の部屋を訪れた。
 お話があります、と彼女は神妙な面持ちで、父君に切り出した。
 大成様は娘の話を、至極真面目に受け止めた。



1022年 3月

 紅花様と月光天ヨミ様のお子様は、母君によく似た赤髪と青い目の女の子だった。
「春のうららかな日に生まれたあなたに、“春花(はるか)”と名付けます。どうか穏やかな人生をこの子に……」
 新しい生命と入れ替わるように、この月初め、大成様の健康度が下がった。
「春花の面倒は俺が見とくから、おまえたちは二人で出陣しなさい」
「はい、父さん。春花を、よろしくお願いします」
 春花様は膝の上に乗せた娘に「じいじに“よろしくお願いします”って」と耳打ちする。春花様は母親の膝から降りると、緊張した面持ちで姿勢を正し、「よろしくおねがいします」と頭を下げた。
 大成様は一瞬にして破顔し、「じいじと二人で頑張ろうなぁ~」と孫娘を引き取って膝の上に座らせた。
「今月は選考会かぁ。ま、俺ら、二人でも余裕だよなぁ」
 紅花様の肩を叩いて、よろしく!大将!と紅成様は笑った。
 紅花様はきょとんと兄を見る。ややあって、父の大成様に視線を移す。
「何、言ってる。隊長はおまえだ、紅成」
「……は?」
「私もそれがいいと思う」
「…え、は???」
 この時期、当主抜きの出陣で隊長を任されることの意味を考えて、紅成様は動揺しているらしかった。
「いやいや、だって、俺は、」
「面倒だから、もう言っておくが、次期当主はおまえだからな」
 大成様は、当主ノ指輪がはまった人差し指で紅成様を指し示す。幼い春花様だけが状況を理解できず、不思議そうに母や伯父の顔を眺めていた。
「なん、で、」
「当主はこの家の司令塔だ。鬼との戦で、おまえは慣れない武器で後方に立ちながらも、的確に道具や術で俺や紅花を支援した。迷宮攻略や、この度の交神に関しても、先を見据えて自分の考えをもって、俺に臆することなく進言してきた──当主に必要なのは戦における強さではなくて、そういう物の考え方だと、俺は思う。だから、だ」
 父の、当主の、そうした評価を直に受けるのは初めてのせいか、紅成様は耳まで赤くなった。
 紅花様は元からその心づもりだったのだろう──至極当然という顔で、話を聞いていた。
 でも、とまだ何かを言いかける紅成様を遮ったのは、紅花様だった。
「私は子どもを為すことで務めを果たした。この上、当主まで引き受ける気はない。私たちは半分ずつで生まれたのだから、一本松家の責も、半分、受け持ってよ」
 妹のその言葉に覚悟を決めたのか、紅成様は「わかった」と一言だけ答えた。



1022年 4月
 
 大成様は3月、4月と漢方薬を服用しながらも、春花様の訓練を引き受けた。その間、双子は選考会に討伐にと、忙しく走り回った。紅花様は先代が創作した猛毒刃も復活させた。
「俺はここまで。おまえらは、こっからな」
 死に際、大成様は当主ノ指輪を紅成様に引き渡した。
「おまえの時代だ、紅成。好きにやれ」
 大成様はそれだけ言って、眠るように息を引き取った。







05i
大成(たいせい)
 好き:うたた寝
 10か月で5代目当主に就任。薙刀士。
 素質点8000点台の先代から2000点台の子が生まれたときにはどうしてくれようかと思ったが、物語的にもプレイ進行的にも優位に働いてくれた好人物。
 低い素質だったからこそ、先代とは別の視点で、“当主”というものを考えられるようになった。そういう頭の良さは、母・静花譲りだなぁ。
 交神の儀の時、最高神とも可能だったが、何となくしっくり行かず、高い奉納点順に下っていって、ピンと来たのが茅宮卑弥子様。あとから「この人、母ちゃんに似てね?」となって、潜在的なマザコンに気付いて、ショックを受ける。無自覚系マザコン。当の卑弥子様は真面目で話のわかる方だったので、普通に仲睦まじく過ごしました。チューくらいしたんじゃないかなぁ?
 イツ花に対しては、姉のような、第二の母のような。
 2人の子を育て上げ、孫娘の訓練も2か月みっちり施した。大往生な人生でした。享年1年9か月。

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