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一本松家 9代目 栄成

2019.09.11 20:56|俺屍
 一人っ子プレイでイツ花の視点で綴る形式。
 9代目 栄成(えいせい)の記録。1025年2月~1025年11月。




1025年 2月

「嘘だろ…。親父…」
 討伐から帰った栄成様は、先代の亡骸を前に膝を折った。遺体を保存するため部屋の中は暗く、寒かった。
「せめて、あと一か月…、生き延びてほしかった…」
 きゃははっ、と子どもたちの明るい声に重なって、後ろを駆け回る気配がする。
 ──何かが倒れる音。続いて、それは泣き声に変わった。
「とーうちゃん、トモちゃんがっ!!」
「あーんっ、あーんっ」
 背後に子どもらの声を受けながら、栄成様は深くうなだれる。
「…どうすんだ、これ」
 今月、ご来訪された桃果仙様とのお子様は二人。
 男女の双子で、兄の方は朋成(ほうせい)、妹の方は朋花(ともか)と名付けられた。朋成様は父君似の緑髪で槍使い、朋花様は先々代似の赤髪で薙刀士だった。
 
 

 先代の葬儀は近所の方々の協力もあって、無事に終えることができた。
 背中に寝入った朋成様を背負い、腕に朋花様を抱えた栄成様は、呆然とする。
「親父の人望に感謝だな。幼児二人を抱えては、俺とイツ花だけでは無理だった…」
「こういうお葬式も悪くはないですねぇ…」
 葬儀の後、大宴会会場の跡地となった我が家の大広間を見て、私は呟く。
 畳の上には酒瓶がいくつも転がり、お重が点々と落ちていた。お礼も兼ねて、通例のお葬式に倣い、手伝って下さった方々にお寿司やらお酒やらを振舞ったのだが、──後片付けはなかなかに大変そうである。
「初代が“葬儀は略式で”って決めた理由がわかったな。こんなの、毎度やってたら、一苦労だ」
 栄成様はあくびを一つした。
「片付けは明日にしてもう寝よう。俺、もう限界だ…」
 おやすみなさい、と寝所へ向かう栄成様の背中に、私は声を掛けた。



1025年 3月

 市街では流行り病が猛威を振るっていたが、一本松家には関係ないようで、栄成様もお子様方も大変元気に過ごしていた。
 二人のお子様は大層仲が良く、何をするにもいつも一緒だった。朋成様は朋花様を「トモちゃん」と呼び、朋花様は朋成様を「ホウちゃん」と呼び合った。
 仲が良い──というのは、喧嘩をしないということではなく、細かな小競り合いはしょっちゅうあった。
 当主部屋で術の巻物などを眺めている際、遠くからどちらかの泣き声が聞こえてくることはもはや日常茶飯事である。栄成様はそのたびに溜息を吐き、二人の元へすっ飛んでいった。
「父ちゃん、ホウちゃんがぁ!」
「トモちゃんがね、トモちゃんがね!」
「──やかましい!!」
 話も聞かず、栄成様はゲンコツを二人の頭にくらわす。うあーんっ、と同時に二人は泣き出した。
「揉めたら、じゃんけんで決めなさい! じゃんけんで!」
 うう、と二人は呻きながら、頭を押さえる。
「ったく。いいか、お前たち!」
 栄成様は腰に手を当てて、声を上げる。
「お前たち同士でじゃれあうなら、別にいい! だが、それが一般人相手なら、どうだ? ちょっとのどつきが大怪我になる可能性もある! 暴力禁止! 今後、揉めたら、じゃんけんで決めなさい!!」
 わかった???と念を押す栄成様に、双子は顔を見合わせる。その顔はまだ不満げではあったが、
「「はあい」」
と、二人は声を合わせて、返事をした。
 はぁ、と栄成様は溜息を吐く。
「…見かけは子犬だが、中身は猛獣だ。躾をきちんとしないと、後々死人が出る」
 お一人で二人を育てるのは、なかなかに大変らしい。
 栄成様は、先月は朋成様の、今月は朋花様の訓練を行い、冬から春の季節はあっという間に過ぎた。



1025年 9月

 6月から8月は白骨城の討伐に向かい、稲葉ノ美々卯様を解放、最上階まで行くものの、大江ノ捨丸には惨敗してお屋敷へ戻られた。
「今月、俺は休むから、2人で討伐へ向かいなさい」
 先月の負けが響き、栄成様は満身創痍だった。父君からの命にハッとした二人は、顔を突き合わせて相談する。
「えっ。どうする? どこ行く?」
「紅蓮の祠かな? 赤くてイイ!」
 仲良く相談し始める二人を見て、うんうんと栄成様は嬉しそうに頷く。
「子どもらだけで討伐に行かせることができるのも、二人いるからこそだなぁ!」
「子育ての苦労が報われますね~」
 本当に、と栄成様は涙を拭う(ふりをする)。
「とはいえ、来月は二人の成人だ。そろそろ、交神をどちらに任せるか決めないと…」
 一本松家のしきたりにより、双子で生まれた場合は片方のみが子を繋ぐ。片方は子を成せない、というのは(個人の考えにもよるだろうが)一般的には辛いことだろう。栄成様が悩むのも無理はなかった。
「あ、父ちゃん、交神の儀に関してだけど、」
「私たち、もう決めたよ!!」
「…は?」
 双子は互いの手を合わせて、謎のポーズを取りながら、話し始める。
「俺が、交神担当でェ、」
「私が、次期当主!」
「決めたって…おまえたち、どうして、」
「「じゃんけんで決めたぁ!」」
 明るく言い放つお子様方の言葉に、栄成様は押し黙る。
「揉めそうなら、じゃんけんしなさい、って、」
「いつも父ちゃんが言ってるから。ね?」
「勝った方が、交神担当で、」
「負けた方が、次期当主!」
「…当主の方が大変そうだから、」
「…負けた方でいいよねって、」
 パッと、二人して栄成様を見て、尋ねる。
「「ねぇ、それでいい?」」
 ──いいも何も。
「……お前たち、二人がそう決めたのなら、」
 諦めの境地で、栄成様は言った。
 やっぴー!!と双子は両手を合わせて、歓声を挙げる。
「じゃんけん…? じゃんけんでいいのか…?」
 栄成様はまだ何かを迷っているようであったが──かくて、来月の交神担当と、次期当主が決まってしまった。



1025年10月

 朋成様は交神相手に常夜見お風様をお選びになった。
「どんな方だった?」
「綺麗な人だったよ~」
 朋花様の問いに、顔をデレデレさせて朋成様は言う。
「とても良い匂いがした。お肌もすべすべ」
「ぶぅ。ホウちゃんばっか、ずるい! 私も嗅ぎたかった! 触りたかった!」
「実際、触られたのは俺の方だけど、」
「どうゆうこと?」
「目が見えない方だったんだよ。で、顔を触ってもよいか聞かれて、どうぞ、って」
「へぇ。神様にも色々な方がいるのねぇ!」
「目は見えないけど代わりにいろんなものが見えるって。うちの未来とか。“光がある”って言われたよ」
「幸先いい~!!」
 交神の儀を経ても双子の仲の良さは変わらず、むしろ拍車を掛けているようにすら見えた。
 ふむ、と栄成様は二人の会話を聞いて、思案する。
「それなら、来月は髪切りに挑戦してみるか」
「「えっ!」」
 ぱっと二人は揃って父君を見る。
「ほんとに、ほんと?」
「あの七本集めろって言われてたやつ?」
 そう、と栄成様は答える。
「俺が出撃できるのも残り僅かだ。一度やってみてもいいかもしれない」
 “残り僅か”の言葉に、二人はしゅんとする。栄成様の健康度は、今月になってもまだ戻っていなかった。
「なら、」
「頑張らないと、」
 決意を新たにしたお二人の言葉に、栄成様は目を細める。
「それと、今月から二人の寝所を離すぞ」
「「えっ!! なんで!?」
「何でも何も、お前たちはもう成人だろう? “男女七歳にして席を同じうせず”と言ってな、兄妹とはいえ、男女で同じ寝室というのはさすがに──、」
「そしたら、私一人で寝るの!?」
「トモちゃん、平気?」
「へ、平気じゃない…」
 うぐぐ、と泣きそうな朋花様の肩を支えて、朋成様は父君に食ってかかる。
「トモちゃんがかわいそうだよ!」
「そのうち慣れる」
 しかし主張は無視され、寝所は無情にも引き離された。
「あいつら、四六時中一緒にいるのに、なぜ寝る時も一緒にいたがるんだ?」
 栄成様は不思議そうに首を傾げるばかりだった。



1025年11月

 栄成様の宣言通り、この月、相翼院で片羽ノお業を打倒、見事にその奥にいる二ツ髪を刈り取ることに成功した。
 しかし、討伐から帰るなり、栄成様はお倒れになった。
「父ちゃんのばかぁ!」
「双光斬を何度もやるからぁ!」
 父君の布団を囲み、二人は声を上げて嘆く。
 二ツ髪は、龍に三倍効くという“走竜の薙刀”と、栄成様と朋花様との奥義の併せでどうにか討ち取れたらしい。
「努力がちゃんと実を結ぶのは百のうち一あるかないか…。人生の賭け率なんて、そんなもんだ」
 泣く子どもたちの頭を順に撫でながら、栄成様は言う。
「まっ、他人の百倍努力することを苦にしなけりゃ、いつだって大当たりだけどよ」
「…奥義の併せを、4回も外した父ちゃんに言われても、」
「説得力がないよぉ…」
 ハハッと栄成様は笑って、当主ノ指輪を朋花様に渡した。
「二人で仲良くな」
 ──栄成様、享年1年7ヶ月。
 二人の子どもに看取られ、静かに息を引き取った。





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栄成(えいせい)
 自慢:背筋
 9か月で9代目当主に就任。薙刀士。
 子の来訪月の直前に父に先立たれたため、双子の子育てにイツ花と二人で翻弄した人。
 自慢の背筋は双子の上げ下げトレーニングで培ったものだと思われる。
 素質は悪くなかったが不幸体質なのか、最後の戦、二ツ髪戦で奥義の併せを4回も回避された。
 イツ花とは子育て苦労仲間として共感することも多かったが、父の…という意識があって、恋愛的な感情を抱くことはなかった。享年1年7ヶ月。
 四柱目の氏神“無量大一本松”として昇天。

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