FC2ブログ

一本松家 12代目 結花

2019.09.24 21:08|俺屍
 一人っ子プレイでイツ花視点で綴る形式。
 12代目 結花(ゆいか)の記録。1027年9月~1028年7月。




1027年 9月

 先月末に病が悪化した先代は、あっさりとその命を終わらせた。彼の葬儀は朝早くに執り行われ、娘の結花様、孫の菊花様がそれを見送った。
 常成様は氏神条件に適い、“常立ノ一本松”として昇天なさった。
「天界でお母様と一緒に見守っていてくださいね、お父様…」
 墓前に手を合わせ、結花様は少し寂しそうに笑った。



1027年12月

 10月の相翼院では初陣ながら菊花様が編み出した“獣踊り”と、結花様との連携技で鳴かず弁天様、片羽ノお業様を解放。11月と12月は地獄への探索へ乗り出した。
「…思った以上に深いわね」
 探索から帰ると、結花様はうんざりと溜め息を吐いた。
 氷雪針地獄、血の池地獄をそれぞれ巡り、各階層の親玉、大百足と大八手を打倒しながらも、さらに続く亡者砂漠、その奥に立ち聳える修羅の塔──と、地獄巡りは思った以上に難航していた。
「塔の前の砂漠が特に厄介なの。通常攻撃の威力が落ちるみたいで、」
「結花様は術が苦手ですものねぇ」
「そうなの! 幸い、この子の技の覚えがいいから助かるけど、」
と、結花様は娘の頭を撫でる。
 菊花様は照れたようで、頬を染めて俯いた。
「…それでも、まだ威力は足りないわ。どうしたものかしら?」
 んー、と結花様は首を傾げる。
「少し目先を変えて、まだ解放していない神々をお助けするのはどうですか?」
 顔を上げて、菊花様は言った。
「あと何人いらっしゃったかしら?」
「巻物を持って参ります!」
と、菊花様は奥の部屋から神様一覧の巻物を持って来た。それを、母君と私の目の前に広げる。
「ほら──赤猫お夏様、大江ノ捨丸様、太刀風五郎様、雷電五郎様、氷ノ皇子…と、地獄以外の迷宮に囚われている神々はこんなにおります」
「そうねぇ…。その方が、先のためにもいいのかしらねぇ?」
 菊花様の提案を受け、翌月の討伐では忘我流水道にて氷ノ皇子様を解放。2月には再び地獄へ潜り、血の池地獄の大八手を打倒した。



1028年 3月

「とうとう来たわ! 春の選考試合!」
 ぱんっと掌に拳を叩きつけ、結花様は気合いを入れた。
 昨年の夏、阿部晴明社中に惨敗してから、その雪辱を晴らすことが彼女の密かな目標であった。
「今年は菊花もいるし、勝てる気がする! ──頑張りましょうね、菊花!」
「はい! お母様!!」
 菊花様は元気に応え、お二人は選考試合へと臨んだ。

「一本、取れなかった…」
 優勝を果たしたにも関わらず、結花様はその内容に納得していないようだった。
 菊花様は苦笑する。
「どうしても“完全勝利”がしたいんですね」
「当たり前でしょ!」
 ふん、と鼻息荒く結花様は答える。
 菊花様は小首を傾げた。
「どうして、そんなにこだわるのです? あの殿方に何か執着でも?」
 知ってる? イツ花、と聞かれ、「さぁ?」と私も首を傾げるしかない。
「別にそういうのではないけど、」
と結花様は遠い目をして言った。
「他にすることもないし…」



1028年 4月

 縁側で神様一覧の巻物を眺めながら、菊花様は物憂げな表情を浮かべていた。8か月の成人を迎え、今月は交神の予定である。
 庭では桜が満開で、花びらがふわりと菊花様の頭にかかった。
「お相手でお悩みですか?」
 その花びらを取って、私は声を掛ける。私の手の花びらを見て、あら、と菊花様は顔を上げた。困ったように笑って、首を小さく横に振る。
「ううん。もうお相手は決めてあるの」
「気に入った方がいらっしゃったのですね」
 よかったです、と私は言うが、菊花様の表情は晴れない。
「ちなみに、どなたです?」
 私が尋ねると、彼女は日光天トキ様を指さした。男神では第三位の実力者である。
「素質の高い子が欲しいと思って。私は風の能力が低いから、補って下さる方がいいかな、って」
「…よくお考えになっているのですね。ご立派です」
 結花様の時を思い出して、私はしみじみと言った。
「…ちなみに、結花様は“大酒飲みっぽいから”という理由で、選んでましたよ」
「お母様らしいわねぇ」
 ころころと菊花様は楽しそうに笑う。
 ようやく彼女の表情が明るくなったので、私は少し安心した。
「…お母様のことが、少し心配なの」
 落ち着いた頃、菊花様は小さな声で言った。
「亡くなる前のお祖父様もあんな感じだったから、」
「…というと?」
 私にはいまいちピンと来なくて、尋ねる。
「お母様は、生きていることに飽いているのかもしれない」
 菊花様は息を吐く。
「地獄の探索は思うように進まないし、お母様は先代から受け継いだ奥義が揃っているから、新たな技を創作する楽しみもない。残りの神々を解放すると言っても、あまり乗り気ではないようだし……趣味のお酒も、あまり召し上がらなくなって、」
 菊花様は神様一覧の巻物を撫でながら、続ける。
「短命の呪いで、たかだか一年半の命…。それなのに、人生に飽きることもある。永遠を生きるという神々なら尚更なのかもしれないわね」
 それとも、と菊花様は顔を上げる。
 思いついたというように、私の方をゆっくり見て。
「…私たち一族の感覚が、神に近付いている、ということなのかしら?」
 ──私には、何も答えられなかった。



1028年 7月

 5月には九重楼にて太刀風五郎様、雷電五郎様を解放。
 6月には日光天トキ様の元から、菊花様のご息女がご来訪した。職業は一本松家初の拳法家。ご自身とも、祖母の結花様とも違う職業にしたことには、何か意味があったのだろうか?
「この髪質は私譲りかしらねぇ?」
 孫娘のふわふわした髪を撫でながら、結花様は言う。
 結花様の言う通り、ご息女の髪はゆるめの波を描いており、色は母君譲りの緑。目の色は初代以来の赤だった。
「あなたには“澄花(すみか)”と名付けます。初代と同じ目の色はきっと吉報の証。曇りなき目で、真実を見つけてね」
 母君に頭を撫でられ、澄花様は嬉しそうに目を細めた。

 澄花様の訓練は2か月間、祖母の結花様に任せられることになった。その間、菊花様は「資料の整理がしたい」とのことで、討伐はお休みし、当主部屋に籠ることが多くなった。
「澄花は技も体の力も伸びがいいねぇ。きっと強くなるわ」
 孫を優しくも厳しく躾けた結花様は今月で1歳7ヶ月。漢方薬でごまかしてきたが、毎月の健康度は下がるばかりだった。
「すべてが止まるだけ…。“私”がなくなるわけじゃない…。永遠ってこういうコトね…」
 不意に何かを悟ったように、結花様は言った。
 どういう意味ですか、と孫の澄花様が尋ねたが、彼女は曖昧に微笑むだけだった。
 孫娘の柔らかな頬に唇を寄せ、「…あなたにも、いつか分かるわ」と囁いて。
 ──翌日、結花様は安らかな表情で旅立った。
 その臨終の表情は満足げで、それだけが残された家族の救いとなった。





14.jpg
結花(ゆいか)
夢:杜氏
 10か月で12代目当主に就任。槍使い。
 素質が悪かった印象はないのだが、氏神にはならなかった。
 一本松家における光成に続く呑み助。
 光成はヒトとの絆を求めて酒飲みになったのに対して、結花は純粋に酒の味に惚れ込んでの酒飲み。氏神にならなかったから、転生して夢であった杜氏になっているかもしれない。
 イツ花のことは「姉」のような存在だと思っていた。






スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
カレンダー

01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

カテゴリー

管理人

amano

Author:amano

リンク