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一本松家 15代目 鞠花

2019.09.29 21:51|俺屍
 一人っ子プレイでイツ花視点で綴る形式。
 15代目 鞠花(まりか)の記録。1030年3月~1030年5月。



1030年 3月

 先月、亡くなられた澄花様は氏神条件に敵い、“守護星一本松”として昇天した。
 母君の言には思うところがあった澄花様であったが、その考えは理解をしていたので、生前には「もし、私が氏神になることがあったら、絶対に奉ってね」と娘の鞠花様に念を押していた。
「神棚を作りましょう」
 埋葬から帰って来た鞠花様は、そんな提案を口にした。
 幼い流成様は首をかしげる。
「かみだな?」
「神様を奉る場所よ。おうちの中に作るの。近くで見守ってくれているようで安心するでしょう?」
「…ばあばも、そこに来る?」
「えぇ、もちろん」
 鞠花様の答えに、流成様はパッと顔を輝かせる。
 私も手を合わせて、賛同する。
「よい案ですね。きっと歴代の氏神様方もお喜びになります!」
「しつらえはイツ花に任せてもいい? 巫女さんだから、詳しいでしょう?」
「任せてください! 立派なものを作ってもらいます!!」
 ちからこぶを作って、着物の袖をまくった。
 よろしくね、と鞠花様は笑顔で答える。

 知り合いの宮師さんに頼み、一本松家の神棚は一か月後には完成した。
 榊を飾り、米、酒、塩、水を小さな器に盛って供える。
 鞠花様と流成様は二人で手を合わせ、神棚の前で深い礼をした。
「お水やお米は毎朝、取り換えて。流成、あなたの仕事です。任せたよ」
「うん、わかった!」
 仕事を任せられたのが嬉しいのか、流成様は毎朝欠かさずにお供え物を取り換えた。
 家族の無事と繁栄を祈り、一本松家の朝は親子揃っての礼拝から始まることになった。



1030年 5月

 二か月目の流成様の訓練を終え、鞠花様たちは地獄への探索へ乗り出した。
 お母様と行けなかったところまで行ってみる、と笑顔で鞠花様は出掛けられた。当家二人目の踊り屋となった流成様は技の覚えもよく、通常攻撃が劣る亡者の砂漠も乗り切れると踏んでいた。
 4月、5月と続けて討伐を行い──月の半ばまで来た頃だろうか。
 イツ花!と流成様の声が聞こえ、私は玄関先へ急いだ。
 そこには、小さな体で血まみれになった鞠花様を抱えた流成様がいた。

 武具を外して急いで鞠花様の傷を見る。──深い。火筒で敵の攻撃を防ごうとしたのだろう、“イカズチ砲”には大きな傷が付いており、戦況の激しさを思わせた。
 応急処置を施して、寝所に鞠花様を寝かせる。その間に、流成様は医者を呼びに都を走った。
 医者の診察を受けながら、流成様は懸命に当時の状況を説明した。
「亡者の砂漠で…、茨城大将が二匹も敵を吸収してっ…」
 急激に強くなった敵の大将を目の前に「無理だ」と判断した鞠花様は、流成様に退却を指示した。「私はあとから行くからっ」と言う母の言葉に従って戦場から逃れたが、鞠花様は逃げ遅れた。元より軽防具しか身に着けられない大筒士は、防御面に弱い。次に大将から繰り出された一撃で、鞠花様はあっさりと倒された。
「母さんはオレを先に逃したからっ…、オレを守って…!」
 えぐえぐと嗚咽しながら、流成様は言う。
 医者は渋い顔をして、私たちに告げた。
「傷が深くて、出血が止まらない…。あなた方は強い生命力をお持ちだが、おそらくこれはもう……、」
 それ以上は断言せずに、彼はたくさんの痛み止めと包帯を置いて帰って行った。
 荒い息をして痛みに耐える鞠花様に、私は痛み止めを煎じることしかできない。この薬は麻薬の一種だ──死に際を安らげるための、気休めにしかならない。
 かあさん、かあさん、と母の手を握って、流成様は何度も何度も呼び掛けた。
 ──戦からの敗走。交神の儀の他に一族の特権として、隊長が倒された場合にそれは発動される。戦場において隊長が倒された場合、瞬時に屋敷へと転送される。過去にも何度かそういう場面はあったが、今まで死に至るような事態には陥らなかった。
 私と流成様は寝ずに彼女の看病を続けた。
 明け方頃、意識が朦朧した状態で、鞠花様は呟いた。
「どんなときも“あぁ、楽しい”ってわざと何度か声に出せば、だんだんとその気になってくる」
 母さん、と呼ぶ流成様の頬を、鞠花様の手が力なく触れる。
「…あぁ、楽しい!!
 …あぁ、楽しいねえ、
 …あぁ、本当に楽しかった」
 ──それが、彼女の最期の言葉となった。




17.jpg
鞠花(まりか)
 得意:蕎麦打ち
 10か月で15代目当主に就任。一本松家初の大筒士。
 亡者の砂漠にて茨城大将と討ち死にしたので、わずか3か月の当主歴でした…。
 父の氷ノ皇子の高い水属性を継いで、心の水の高い、優しい子に育ちました。その優しさは母の澄花をも救い、息子の流成には大きな影響を残しました。
 9柱目の氏神“慈母胎一本松”として昇天。
 グレートマザーな彼女にふさわしい氏神名でした。
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